利弘健公認会計士・税理士事務所 ストラテジープロッツ合同会社

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2024.03.09 注意喚起/令和6年6月以降の定額減税による、給与支払事務担当者への影響

 当事務所の顧問先様には今月月初にお送りした「事務所通信 令和6年4月号」の冒頭の記事『所得税・住民税の「定額減税」のポイント』でも紹介しましたとおり、令和6年6月から定額減税が実施されることとなります(住民税は令和6年7月から)。

 これにより、簡単に言うと次のとおり所得税で最大3万円、住民税で最大1万円の減税措置が講じられましたが、給与支払者にとっては、従業員に係る当該減税手続きを、給与支払者が担うことになります。即ち、従業員を雇用し、給与を支払う事業者にとって事務負担が増えるため、事業者泣かせの制度になりそうです。

<定額減税の対象者>

令和6年分所得税について、定額による所得税額の特別控除の適用を受けることができる方は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方(給与収入のみの方の場合、概ね給与収入が2,000万円以下である方)です。

所得が少なく、住民税を納めなくてよい非課税世帯など定額減税の対象外 (かわりに給付金あり)
所得税や住民税を納めている会社員や個人事業主など定額減税の対象になる
年収2,000万円超のサラリーマンなどの高所得者定額減税の対象外

<従業員に対する定額減税額>

1.本人(居住者に限ります。)30,000円
2.同一生計配偶者または扶養親族 (いずれも居住者に限る)一人につき30,000円

ただし、その合計額がその人の所得税額を超える場合には、その所得税額が限度。

対象者条件
本人令和6年6月1日時点で給与の支払者のもとで勤務している給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用されている令和6年の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下
配偶者 扶養控除等申告書に記載された配偶者同一生計配偶者※
扶養親族  扶養控除等申告書に記載された控除対象扶養親族及び16歳未満の扶養親族

※定額減税の対象となる同一生計配偶者とは、控除対象者と生計を一にする配偶者(青色専従者を除く)のうち、合計所得金額が48万円以下の人

<給与支払者の事務イメージ>

 納税者本人が給与所得者の場合、まず、所得税の控除方法については、「令和6年6月1日以後最初に支払を受ける給与等(賞与含む)に係る源泉徴収税額から控除する」とされていますので、同6月に支給される給与に係る源泉徴収税額から控除することになります(例えば、給与の支払が「月末締め翌月15日払い」の場合、令和6年6月15日に支払われる5月分の給与に係る源泉徴収税額から控除)。そして定額減税の額が、令和6年6月の源泉徴収税額を上回る場合には、翌7月以降に繰り越して、順次控除しくことになります。

 一方、個人住民税の控除方法については、「特別徴収義務者は、令和6年6月に給与の支払をする際は特別徴収を行わず、定額減税の額を控除した後の個人住民税の額の11分の1の額を令和6年7月から令和7年5月まで、それぞれの給与の支払をする際毎月徴収する」とされていますので、令和6年6月の特別徴収税額はゼロとなり、7月以降、定額減税額控除後の個人住民税を11か月間で均等に徴収していくことになります(通常は6月から翌年5月までで徴収)。

<給与支払(担当)者の実務への影響>

 給与所得者に対する定額減税は、前述のとおり、源泉徴収・特別徴収で対応していくことになるため、給与担当者の実務に確実に影響が出ます。中でも、所得税に係る定額減税については、従業員ごとに、家族構成によって定額減税の額や毎月の源泉徴収税額が異なることから、対応に差が生じるため、これらを正確に把握して給与支払額を決める必要が生じます。即ち、毎月の源泉徴収税額から、それぞれの従業員ごとに当該定額減税額を加味して給与を振り込む必要が生じますので、給与支払事務担当者の負担は相当程度増えると思われます。

 当該事務を間違いなく執行するためには、従業員ごとの定額減税額を正確に把握する必要があります(新たに「令和6年分 源泉徴収に係る定額減税のための申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」が新設される予定です)。また、7月以降入社の中途採用の従業員がいる場合には、前職から交付される源泉徴収票の摘要欄に「定額減税額(所得税)●●円」等と記載されている必要がありますが、記載がない場合にどこまで確認するか、など悩ましい問題が増えることになりそうです。

<参考URL>
国税庁「定額減税特設サイト」